廃業したい宣言の訳


そもそも、父がケアンテリア大好き人間だった。
何故? 好きだったのかは知らないが。
ずーっと、ずーっと前から好きだったようだ。
まぁ、父という人間は生き物やら以外でも
好きな物は多かったが・・・

退職をしてから、正々堂々と田舎暮らしをし、
これまた、意気揚揚とケアンをあちらこちらから
取り寄せて、遊びに行く度に『これはイギリス産なんだ』
『これはアメリカ産なんだ』とウンチクを聞かされたっけ。
そして、どんどん増えていったわけ。
最初は、ブリーダーをしたくてではなかったの。
好きで、好きでどんどん増えていったから
『大事にしてくれるならお譲りしましょうか?』から
始まったことですね。そして、口癖は
『いいか?のんた。 生き物は絶対にタダであげちゃダメだぞ。
1万でも2万でもお金を出すか出さないかで
可愛がってくれ方が変わるからな。俺は金が欲しいというよりも
可愛がってもらいたいんだ』でした。
父も、母も本当に【人がいい】の一言かもしれない。
『今ね、ケアン見に来た人が帰ったところなのよ』聞けば
ケアン見物に来た人、初対面の若い人を
『泊まっていきなさい』と泊めたと聞き、
ビックリして
『いい加減にしなさいよ。全部が全部いい人とは限らないでしょ』と、
この手のお小言を何回言ったか解からない。
【犬好きに(特にケアンだな)悪い人はいない】と
信じている人達。
ワンコの話をする時は、それはそれは
うれしそう。
20頭の犬が一度に吠えるとそれは
もう大変なもんで・・・野犬がウロツク頃なんぞは
夜中でも何でもお構いなく20頭が吠えるわけで・・・
遊びに行っていても『ウルサクテ眠れないよぉ・・このバカ犬ドモ!!』なんぞ
言おうもんなら『耳栓して寝ろ』だもん。
ワンコと語らっている話し声に
耳を傾けると『お前はウチの常務だもんな』とか
言っていたっけ。父が社長で、ワンコ達が社員だったわけか?
父とワンコの話は、本当に書き切れない程あるのだが
それよりも、父が体調を崩してからの
母の苦労は大変だった。
散歩も、犬舎の掃除も、餌の買出しも一人で
やらないといけない。
おまけに、体は自由に動かないが、
口だけは出す父は、「あー、そんなやり方じゃダメだ」だの
と駄目出しをする。
入退院を繰り返していたので、病院での介護と、犬の世話で
本当に大変そうだった。

兄弟が3人いても、皆がそれぞれに家族を持ち
仕事を持ち、『いずれは家に入らなければ』という
思いはあっても、中々現実的にはすぐというのは難しい。

母が胃癌宣告(この時の父の狼狽ぶりはまた違う折に・・)をされて、病院に入院中は、私が病院の母を、兄達が順番で実家の父と、犬の世話という風に何かあると、常に犬のお世話というのを考えなければいけない。

母が退院してからは、離婚した兄が自宅に【期間限定】で
戻って世話をしてくれたので助かった。

父は、【危篤】という危ない状況が何回もあった。
心臓を患っていたので、発作が出ると【危篤】になってしまう。
(発作が無事に治まるとあとは、割と平気になるのである)
【危篤】で病院へ家族が集まる。それは例えば
『今晩が峠』と言われても
『もう大丈夫』と、言われても
とにかく、一回実家へ帰る。皆で犬の散歩&犬舎の掃除。餌やり。赤ちゃんがいる頃は離乳食も食べさせる。

父が亡くなった時も、(父参照してね)
それは例外ではなくて、通夜や葬儀が終わって自宅に戻り、すぐに兄二人と私はジャージに着替え、やはり散歩だ。
生き物を飼うということはこういうことなのですね。
そして・・・
母が一人になり、この作業を一人やるとなるとユウに朝夕と2時間はかかるのだ。
まして、また具合が悪くなったら皆に迷惑を掛ける・・・とか、
体調が悪くても、可哀相だから散歩に連れて行きたい・・・とか
精神的な負担も大きくなっていくのは当たり前。
『お父さんが好きで始めたことだし、この子達皆可愛い。
でも、体力的に難しいから減らしてもいいかな?』と
母から相談された時は、
「もちろんよ。私たちは遠くで何かあった時にしか手伝えないんだもの。毎日、世話しているお母さんが決めることだよ。それに(言い難かったが)
もし、お母さんに何かあった時に住宅事情の厳しい私たち(兄弟)には、この子達(三人で分けても7頭とかになる)はどうにも出来ない」と、話した。
そして、ケアン大好きという方々にお譲りした。
普通は、成犬はあまり譲り手がいないものなので大変に感謝している。

ゴールデンレトリバーの娘の方も貰い手がついた。
親の方は、残したが
父の2回目の命日に(父が母を案じたのか)永眠した。

そうして、現在は3頭のみを残すだけになった。
ブリーダー家業で3頭では少ないだろうか?
でも、普通に家で飼っているのには多いよね。
まだ、『お宅のケアンを・・』と、言って下さる方がいるので
『この数ならどうにか見られるから』と残したらしい。

沢山の『ケアン欲しい』というメールを戴きます。
その度に、事の事情は説明させて頂いている。

ケアンを紹介しているページを
無くそうか? と、悩むのだけど
自分の中で、父がいた活気あるあの時期を
もう少し残しておきたいそんな我がままで
そのままになっています。
でも・・・・
まだ、3頭のケアンは子供が産めますので
頻度は減っても、また、可愛い赤ちゃんを紹介できる日も
ありますので・・宜しくお願いします。




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